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VIP vol.0

Beyond the immunology 1デングウイルスによる疾患デングウイルスは、ネッタイシマカ(Aedes aegypti、図1)や、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus、図2)の刺咬により人→蚊→人→蚊の感染環において自然界に存在しています。ネッタイシマカは都市部に多く生息し、ヒトスジシマカは都市部と郊外の両方に生息しています。ヒトスジシマカは日本では東北以南の広範な地域に生息しています。人はウイルスを保有した蚊に刺咬された後、通常3 ~7日程度の潜伏期を経て発熱、発疹、疼痛(関節痛)を三大主徴とするデング熱を発症します。特異的な治療法や実用化されたワクチンはないため、輸液や解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンが推奨、サリチル酸系は禁忌)などで対処することになります。上述のように、まれに一部のデング熱患者が、出血、ショック症状を呈し、死に至る危険性もありますが、適切な治療により致命率を減少させることができる疾患です。デング熱に対するワクチンの開発の問題点(有効性と安全性)デングウイルスには血清型が4種類もあるため、それぞれの型に有効性をもつワクチンを作ることがとても難しいそうです。現在、ある会社が開発中のワクチンでは、デングウイルスの中和抗体価陽性であったにもかかわらず発症してしまった例があるほか、血清型ごとの有効性がDENV1に57%、DENV2にはたった35%、DENV3に78%、DENV4に75%という状況だそうです。ワクチンはその有効性の他に、免疫持続期間と安全性の確保が問われます。デングウイルスに対するワクチンはその接種後にADEを起こさないことが安全性につながります。しかしながら、デング熱の発症および防御機構には、まだ不明点が残っているため、これらを解明していく必要も残っています。おわりに冒頭に数年後に新事実が発見されることによって、過去の報告が否定されることがあると書きました。野口英世先生は顕微鏡観察を駆使して多くの業績をあげられましたが、後に否定された発表もいくつかありました。野口先生は黄熱病患者からスピロヘータを分離し、これが原因の可能性があると発表していましたが、黄熱病の原因はデングウイルスと同様のフラビウイルス科の黄熱病ウイルスであることが後に確認されています。野口先生は、光学顕微鏡という道具の限界に遭遇していたと思われます。道具の限界が学問の限界なのかもしれませんが、その道具も研究も日進月歩で進歩する現代、新知見に一喜一憂しながら免疫学を楽しんでいきましょう。*抗体依存性感染増強(antibody-dependent enhancement;ADE)については、弊社登録病院様に年2回配布しているAACLニュースのアドバンスVol. 13もご参考ください。vol.0 19