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特集:犬アトピー性皮膚炎1IgE発見への道のり体が作出され、この抗体と反応するアレルギー患者のタンパクがアレルゲンと結合することが確認された。これにより、新しい免疫グロブリンであると推定されたことから、アレルギー性皮膚反応として発現するErythema(紅班)のEをとって、このタンパクをγEと命名した。1966年の春New Yorkの全米アレルギー学会でこの仕事を発表した。その時点では大きな関心事となったが、その後他の研究者が追試してもレアギンに対する抗体を作出できないことから、γEは間違ではないかという疑問が起こった。しかし、石坂らはγEの物理化学的性質を発表し、患者血清中のアレルゲンに対するγE抗体の濃度とレアギンの活性が相関することも確認した。ここで臨床に携わる者の立場から特筆に値すると思われる点は、この一連の研究成果が患者を対象とする臨床分野と直結して得られたものであり、Edward Jenner(イギリス、1749-1823)の種痘の研究成果に相通じる意義があると感じられることである。その後1967年にS. Gunnar O. Johansson (1938-)とHans Hansson Bennich (1930 - )がスウェーデンにおいて骨髄腫患者の血清中に非定型的な骨髄腫に特有なタンパクの存在を確認した。そして、このタンパクがγEに対する抗体(抗γE抗体)と反応することが証明されたため、その骨髄腫はγE産生性の骨髄腫(IgE骨髄腫)と認定された。そのような経過を経て、1968年にスイスヴォー州のLausanne(ローザンヌ)で開催された国際保健機関(WHO)の会議で、γEを正式にIgEと呼称することになった。を同時にかつ迅速に測定可能なプロテインチップなども開発されて臨床検査に応用され、現在アレルギー検査が普及しアレルギーの究明が盛んに行われている。さらに分子生物学の手法を駆使することで、IgEが生理活性物質を誘導してアレルギー現象を誘起する機序の詳細が飛躍的に解明されている。最後に、蛇足ながらアレルギー研究に関する主な報告を表示する(表1)。おわりに1890年に北里柴三郎が抗毒素(抗体)の存在を確認した歴史的な業績と、1976年に利根川進が抗体産生の道筋を解明した業績の狭間にあって、免疫グロブリンの一種であるIgEを、アレルギーを誘起する抗体として発見した石坂公成・照子夫妻の功績はアレルギーの科学的研究における先駆けとして高く評価されるものである。以上3つの偉業は、惜しむらくはともに日本国内で成し遂げられたものでなく、外国で行われた研究成果である。今後、国内の研究環境の改善が企図され、日本国内から科学史に燦然と輝く業績が次々に発信されることを期待するものである。参考文献1.川喜田愛郎:感染論、岩波書店、1964.2. Kay, A.B.: Allergy and Hypersensitivity; History and Concept pp1-23, in 2nd eds, edited by Kay, A.B., Kaplan, A.P., Bousquet, J., Holt,P.G.: Allergy and Allergic Diseases, Wiley-Blackwell Publishing,2008.3.鈴木鑑:免疫学血清学の歩んできた道、近代出版、1974.3)IgEのその後レアギンの正体がIgE抗体であることが判明したことから、次にIgE抗体がアレルギーを起こす機序が検討された。アレルゲンが体内に入ると、それに対するIgE抗体が産生され、そのFc部分が鼻や目の粘膜などに存在している肥満細胞の表面にある受容体と結合する。そこにアレルゲンが再び侵入すると、肥満細胞に結合しているIgE抗体とアレルゲンが結合して2分子のIgEを架橋することになる。その架橋が刺激となって肥満細胞中に存在する酵素が活性化して、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエン、プロスタグランジンが放出される。これら生理活性物質によってアレルギー症状が発現するのである。このような機序については石坂照子が中心になって解明した。また、特異的IgE検査法としてRadioallergosorbentest(RAST)、蛍光酵素免疫測定法(FEIA)が開発されキット化されて一般化している。さらに、多数の成分vol.0 5